ATR・NAIST・NCKUワークショップ(国際合同チームによる課題解決コンテスト)の概要

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※詳細は随時更新されます

1. 全体活動概要

本プロジェクトは、台湾の国立成功大学(National Cheng Kung University, NCKU)、日本の奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)、および国際電気通信基礎技術研究所(Advanced Telecommunications Research Institute International, ATR)が共同で主催する「国際学生チームによる課題解決コンテスト」です。主催者があらかじめ設定した社会問題に対して、国境を越えた学生チームが革新的な解決策を提案し、学生のイノベーション起業力およびグローバル視野を育成することを目的としています。同時に、本計画は、今後の関連イノベーション計画の基盤を整え、社会問題の提示・解決策の開発・PoC(概念実証)につなげる生態系を構築することも目指します。

今回のコンテストのテーマは、「人口が急速に減少し高齢化が進む非都市部地域の魅力を向上させる解決策」に焦点を当てています。5月中旬から活動を開始し、学生による個別の発想、オンライン交流によるチーム結成、遠隔でのチーム指導、日本での現地トレーニングキャンプなどを経て、7月末に成果発表を行います。全体の期間は5月中旬から7月下旬に及びます。最終的には日本・京都のけいはんな学研都市にてスタートアップ提案発表会を実施し、各チームがソリューション成果を発表します。また、優勝チームにはイベント終了後に提案内容のPoCを実施するためのリソースが提供されます。

参加対象はNCKUおよびNAISTの在学生(主に修士課程・博士課程)で、両校からそれぞれ6名ずつ、計12名が選抜されます。そして両大学の学生2名ずつから成る3チーム(計3チーム)を編成します。各チームには、NCKUNAIST双方から派遣されるイノベーション育成分野の専門メンターがつきます。競技期間中、学生は国をまたいで協力し、イノベーション起業提案をゼロからインキュベーションする作業を進めます。主催であるNCKUNAISTATRは、課題テーマの提供、教員による指導、会場リソース、および活動費を共同で提供しサポートを行います。

2. 地域課題の候補(提案も受け付けます)

以下の10の課題はいずれも、非都市部地域における人口減少と高齢化率の上昇を背景とし、「地方の魅力をどのように向上させるか」という核心的目標に焦点を当てています。学生の皆さんは自身の興味・専門に応じて、これらの課題のいずれか、または複数を組み合わせて検討し、具体的な課題(痛点)を深掘りして解決策を提案してください。これにより、地方地域の活性化と持続可能な発展に貢献することを期待しています。

A. 地域文化資産の活性化と体験型観光

  • 課題の説明地域の歴史文化、伝統工芸、祭事などを統合し、体験型観光やSNSマーケティング、文化創造商品の開発と組み合わせることで、若い世代や外部からの観光客を呼び込む。
  • 核心的目標との関連非都市部における地域文化は、人口流出や高齢化の下で見過ごされがちな「宝物」です。これを再発掘し、特色をパッケージ化することにより、地域の認知度を高め、外部人口の流入や短期観光を誘致するとともに、地域経済の活性化につなげます。

B. 高齢者に優しいコミュニティと世代間共生

  • 課題の説明高齢化が進む環境の中で、バリアフリー設備の整備や健康・リハビリ資源の充実、若い世代との交流を促すコミュニティ活動や共創スペースなど、暮らしやすい環境を整える。
  • 核心的目標との関連高齢者の割合が高い地域は活力を失いがちです。空間設計や活動設計を通じて若い世帯や新しい住民と高齢者が共に暮らし・助け合うしくみを作ることで、コミュニティの活性化や人口減少の負の影響を緩和できます。

C. Uターン青年起業と地域インキュベーションの仕組み

  • 課題の説明外へ流出した若者に対し、起業助成やイノベーション育成センター、コミュニティパートナーシップなどを活用して地元へ戻るよう奨励し、先端産業・社会的企業・文創事業などを地元で立ち上げられるようにする。
  • 核心的目標との関連人口流出は地域産業の断絶・老朽化を招きます。若者が地元に戻って新しいビジネスを立ち上げる機会を作ることで、新たな活力と技術が注入され、雇用創出や人口増加につながります。

D. 非都市部のスマート医療と遠隔健康ケア

  • 課題の説明遠隔医療プラットフォーム、移動健康チェック車両、スマート健康監視システムなどを推進し、辺鄙な地域に住む高齢者の医療アクセスを向上させ、高齢者が受診する際の不便を軽減する。
  • 核心的目標との関連人口の高齢化と広域分散により、医療資源がさらに不足します。スマート技術を活用して高齢者の受診ハードルを下げれば、生活の質が向上し、より多くの人が地元に残る選択をしやすくなります。

E. 地域特産農漁業の高度化とデジタルマーケティング

  • 課題の説明: IoTやセンサーなどのスマート農業技術を活用して生産性や品質を向上させ、Eコマースやデジタルマーケティングを組み合わせて地元の農産・水産品をブランド化し、都市の消費者マーケットを狙う。
  • 核心的目標との関連非都市部の主要産業である農業・漁業は、高齢化と人口流出による労働力不足および市場衰退に直面しています。産業モデルをアップグレードし効果的に販路を開拓すれば、雇用機会が生まれ、若い人材の回帰を促すことができます。

F. 非都市部のスマート交通と移動サービス

  • 課題の説明乗り合いバスやアプリを活用した乗車サービス、無人シャトルなど、辺鄙な地域の需要に合った交通手段を開発し、住民の往来を便利にして、高齢者の外出困難や若年層の通勤不便を解消する。
  • 核心的目標との関連交通の不便さは地方からの人口流出を加速させ、高齢者の暮らしを制約する主要な要因です。交通を改善すれば居住環境も向上し、外部からの訪問や移住を引き付ける要因ともなります。

G. コミュニティでのグリーンエネルギーと環境保護型エコツーリズム

  • 課題の説明再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマスなど)の導入や共同管理を推進し、自然保護およびアウトドア型エコツーリズムと組み合わせて、グリーン雇用と地域の持続可能なイメージを創出する。
  • 核心的目標との関連人口が減りつつある地方では公共インフラやエネルギー管理の維持が困難です。グリーンエネルギーのモデル地区に転換できれば、エネルギー負担を減らすだけでなく、「持続可能」という新しい特色で外部からの人口や投資を呼び込む可能性があります。

H. 新住民との融合と多文化の発展

  • 課題の説明移住労働者や新住民を対象に、言語学習・就業支援・社会統合のためのプラットフォームを用意し、地域に溶け込みつつ多様な文化的視点や技術、労働力をもたらすよう促進する。
  • 核心的目標との関連高齢化と労働力不足により、一部の農村部は外国人労働者や新住民を頼らざるを得ません。融合メカニズムが整っていれば、高齢化緩和だけでなく、地域産業や文化の多様化を刺激することも可能です。

I. 地方創生ブランドとマーケティングの統合

  • 課題の説明「都市/町村ブランド」を打ち立て、的確なマーケティングやイベント企画(季節祭や特産市など)を行うことで、地域の知名度を広げ、外部リソースを呼び込む。
  • 核心的目標との関連多くの非都市部地域はグローバル競争の中で際立ったポジショニングを持たず、人口流出が続いています。ブランドイメージを強化し、効果的な対外アピールを行うことで、観光や居住、投資面で魅力を発揮できるようになります。

J. 地域コミュニティの参加と共創による意思決定

  • 課題の説明オンラインプラットフォームや定期的な住民会議などを活用し、高齢者から若者までの地域住民が公共事項について話し合い、共同で提案・協働できる仕組みを作り、地域責任感とコミュニティの結束力を育む。
  • 核心的目標との関連人口減少と高齢化が進む地域はコミュニティの活力を失いがちです。共創型の意思決定メカニズムを通じて住民参加を増やし、帰属意識や主体性を高めることで、在来人口を維持し、新たな移住者の呼び込みにもつながります。

全体スケジュール

Phase 1. 個別発想フェーズ(5月中旬~6月中旬、34週間)

チームを結成する前に、学生が十分に独立した思考と創造的な発想を行い、問題定義と解決策の概要を初期的に作り上げる。

Phase 2. 交流とマッチング、およびチーム結成(6月中旬、オンライン形式、3時間)

両大学の学生がお互いを知り合い交流し、アイデアを共有する中で提案投票によって最も将来性のある企画を決定し、国際協働チームを結成する。また、同時に各チームのリーダーを選出する。

Phase 3. チームオンライン指導フェーズ(6月中旬~719日)

各チームがメンターの指導を受けながら選定テーマを深く掘り下げ、ソリューションを練り上げてビジネスモデルを初期設計し、完成度の高い起業提案を作り上げる。これは最終的に日本で行う集中トレーニングキャンプの下地となる。

Phase 4. 日本での現地討議・集中的トレーニング(722日~24日)

3日間(予定)にわたるワークショップおよび集中的トレーニングを通じ、国際チーム同士が対面で創業提案をさらに磨き上げ、実現可能性を高め、プレゼンテーション能力を向上させて最終発表に備える。

Phase 5. 起業提案発表会(725日)

最終的なビジネスアイデアをビジコン形式で発表する。本発表会はけいはんなイノベーション博覧会(Startup Festival)の一イベントに位置づけられている。優勝チームにはイベント終了後に提案内容のPoCを実施するためのリソースが提供される。